ヘッジとはどういう意味か?

ほとんどの企業は、製品の販売や原材料の調達を行う市場で絶えず価格が変動する場合、そうした不確実性を相殺する仕組みがないと、経営が非常に難しくなるだろう。
基本的に、ヘッジは次の目的のために行われる。

  • 現在、持っている物の価値を安定させる。
  • 育てるか貯蔵して、いつか市場に出そうと考えている物の販売価格を固定する。
  • 買う必要か意図がある物の価格を固定する。

ヘッジを正しく行えば、少なくとも価格の変動によって受ける経済的不利益を減らせるし、うまくいけばリスクを完全に取り除ける

ヘッジの有用性とは?

ヘッジの有用性を示すために、商取引ではない簡単な例を示しておこう。

卒業記念に親類から一〇〇オンスの金貨をもらった例に戻ろう。あなたは金貨を長く持ち続けて、金貨の価値が金の価格の変動に伴って上下するのを見てきた。
金貨をもらったときは一オンス当たり二五〇ドル前後だった。
今は一オンス当たり一二〇〇ドル前後だとしよう。
そして何らかの理由で、これ以上は上げてもたかが知れている、と考えているとしよう。
つまり、金は大天井を打ったので今が売り時だ、と思っている。
問題は、その金貨には通貨としての価値や、手に入れがたい収集品としての価値だけでなく、思い出も詰まっているという点だ。
それで、実際に売ることなく、金貨の価値を固定させるか安定させるにはどうするか。
幸いにも、この板ばさみは、ポジションをヘッジすれば簡単に解決できる
金貨を持ち続けながら、その価値の下落による損失を避けるには、取引ツールで一〇〇オンスの金の先物を一枚売ればよい。
そうすれば、あなたのポジションは現物市場で一〇〇オンスの金を買い、先物市場で一〇〇オンスを売っていることになる。
あなたの予想どおりに金の価格が下がったら、先物の利益で金貨の価値の目減り分を相殺できる
一方、金の価格が上がったら、金貨の価値は上がり続けるが、先物で損が出る。
確かに、先物の損は金貨の価値の上昇で相殺されるものの、損失分を支払うだけの流動資産がないと、この方法ではお金の工面に困るかもしれない。
金貨の価値をヘッジするには、ほかに金のプットオプションを買うなどの方法がある。
だが、その詳しい仕組みや、それを行った場合のプラス面とマイナス面については、私が今説明したいことの範囲を超えるので、ここでは扱わない。

ヘッジ戦略を役立てる

同じヘッジ戦略は株のポートフォリオでも使える。
長年にわたって、優良銘柄をかなりの株数、買い集めていたとする。
それらからは高い配当がずっと得られていて、その配当が止まる特別な理由もない。
だが、株式市場は今後、全般的にかなりの調整が進むと見ている。
だが、持ち株を売らずにポートフォリオの価値を守りたい。
実際、銀行から借りたお金の担保にその株を使っていたら、何としてもその価値を守る必要がある。
この場合も、解決法はかなり単純だ。

個別銘柄の先物を売って、銘柄ごとに売りポジションを取る。
個別銘柄のプットオプションを買う。
ダウやS&Pの先物のように市場全般を追跡する金融商品で、ポートフォリオに見合うだけの売りポジションを取るか、それらのプットオプションを買う。

この場合も、予想どおりに株式相場が下げたら、ヘッジで得た利益で株の価値の目減り分を相殺できる。
コマーシャルズや機関投資家の行うヘッジはこれほど単純ではない。
それどころか、それらはたいてい極めて複雑で、高度な金融知識が必要になる。
そのため、それらの複雑な仕組みを事細かに説明するつもりはない。
ただし、ヘッジが経済のかなりの部分の健全性を維持するうえで、いかに重要な役割を果たしているかを少なくとも概念的に示すために、次に二つの非常に単純化した例を挙げておきたい。
ヘッジが経済全体にとって必要だと分かれば、それが値動きの理解に役立つことになる。
考えてみよう。
通常の状況では、コマーシャルズや機関投資家が行うヘッジはたいてい、どの市場においても売買注文の流れのうちで最も大きな比重を占める。
そのため、それらが値動きの方向に最も大きな影響を及ぼす可能性がある。

ヘッジ戦略の例

最初の例として、あなたがトウモロコシの栽培農家だとしよう。今は春で、ちょうど今年の作付けを始めているところだ。
耕作可能な面積から、約二〇万ブッシェルの収穫を目指している。
耕作にかかる費用は一ブッシェル当たり三ドルと見積もっている。
そのため、収穫分の費用は約六〇万ドルになる予定だ。
一二月限のトウモロコシの先物は今、一ブッシェルにつき四ドル五〇セントだ。
先物市場で今、収穫予定のトウモロコシを売れば、一ブッシェル当たり一ドル五〇セントの利益が保証される。
もちろん、秋の収穫時にはそれよりも高値で取引されている可能性があるが、それよりもはるかに安値で取引されている可能性もある。
秋にトウモロコシの価格がいくらになっているかは知りようがないので、価格変動リスクを管理して、一二月限のトウモロコシの先物を四ドル五〇セントで四〇枚売ってヘッジをすることにする(大豆と同様に、トウモロコシの先物一枚は五〇〇〇ブッシェルなので、四〇枚×五〇〇〇ブッシェル=二〇万ブッシェル)。
六カ月がたち、あなたは作物を収穫して出荷の準備ができている。
ここで、あなたができる取引方法は二つある。
すでに先物市場でトウモロコシを売っているので、それを納会まで持って、取引所を通じて先物の買い手にトウモロコシの現物を渡してもよい。
だが、これはめったに行われない。
地元の穀物倉庫に売るほうが便利だからだ。
穀物倉庫への販売は次のように進められる。
まず、この六カ月間で、トウモロコシの価格が三ドル五〇セントまで下げたとする。
穀物倉庫は三ドル五〇セント×二〇万ブッシェルで七〇万ドル(諸経費込み)をあなたに支払う。
同時に、あなたは先物でのヘッジを手仕舞わないとならない。
つまり、一二月限のトウモロコシ先物を買い戻して、売りポジションを解消するのだ。
最初にあなたはトウモロコシの先物を四ドル五〇セントで売り、三ドル五〇セントでその先物を買い戻す。
それで、一ドルの利益で、合計二〇万ドルの利益を得る(一枚当たり五〇〇〇ブッシェル×四〇枚=二〇万ブッシェル×一ドル)。
あなたの純利益は、九〇万ドルの粗利益(穀物倉庫からの七〇万ドルと先物からの二〇万ドル)から、六〇万ドルの耕作費用(一ブッシェル当たり三ドル×二〇万ブッシェル)を引いた三〇万ドルになる。
一方、トウモロコシの価格が一ブッシェル当たり三ドル五〇セントに下げるのではなく、五ドル五〇セントに上げた場合でも三〇万ドルの利益になる。
違いは、先物の損失がキャッシュフローに及ぼす影響にある。
すでに述べたように、穀物倉庫は現物市場の価格で支払う。
この場合は一ブッシェル当たり五ドル五〇セントだ。
あなたの総売り上げは一一〇万ドルだ(五ドル五〇セント×二〇万ブッシェル)。
先物のヘッジを手仕舞うときに二〇万ドルの損失が出る(二〇万ブッシェル×一ドル)。
一一〇万ドルの総売り上げから、先物の損失二〇万ドルと、栽培費用の六〇万ドルを引いても、まだ三〇万ドルの純利益になる。

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